2010年12月12日日曜日

台湾でのハートウォーミング


11月中旬に台湾に行って来ました。もちろん出張です。
今回の出張は、単純に営業目的のためだったので、経費を押さえる為に安宿を決めたんですが、これが本当に情けなくなるくらいの安宿で、窓からのすきま風に悩まされ、机においたなめかけのキャンディーに虫が湧いていたのには、本当にぞっとしました。唯一救われたのが、ベッドのシーツと布団が清潔だったことくらいです。

台湾の営業活動は、予想通り、、、というか、さんざんな結果となり、本当に身も心もぼろぼろになっていました。これは出張最終日に、台北でも有名なギャラリーから得た情報なのですが、日本アートが何故受け入れられないかと、とっとつと説明があり、彼が体験した事や言っていることは彼にとっても真実だし、それ故の結果かとも思い、一方で納得し、一方では納得できない鬱々とした気持ちをずっと抱えていました。一方、仕事とはうらはらに台湾にはいい友達の縁があり、台北をベースにしていたのですが、台中の、それこそ台湾で一番いいギャラリーの一つ「Da Xiang Art Space」のオープニングに招待され、台中まで足を運びました。新幹線で約1時間、重苦しくていやな雰囲気に包まれた台北から、気候が温暖で開放的な台中へと移ったおかげで、鬱々としていた気分が一気に晴れ、持って行った冬物のコートを投げ捨てたい気分にかられました。

Da XiangのオーナのChungさんは、トロントに移住した中国人フォトグラファーの段岳衡さんの個展を開催し、ギャラリーだけの展示に留まらず、Volkswagenの台中での2店舗でも展覧会も開催し、本当に精力的にこの才能溢れるアーティストを支援していました。Chungさんは言ってました「このアーティストが台中に浸透するまでまだまだ時間がかかると思います。でも、辛抱する事もアーティストを広めて行く行為には重要なことなのよ。」




このアーティストには、30代の娘さんが同行していました。彼女は、ご両親が住むトロントとは別に、自身の勉強のために北京に滞在し、ギャラリーで彼女自身のキャリアを育んでいるそうです。ギャラリーには内緒で父の為に台中に同行し、一生懸命お父さんの功績を写真に収めていました。この台中で最も優れたギャラリーでお父さんの個展を実現したのは、彼女自身がDa Xiangに働きかけ実現したと言います。本当に献身的にお父さんの裏方をしている彼女を見ていると、私も5年前に亡くなった父の事を思い出し、何故だか涙が止まりませんでした。




私は彼女とはうらはらに、生前父の事が嫌いでした。小さい頃、洋服のブランドのオーナーをしていた父は、横浜の家に週何回しか帰宅せず、会えばお小言ばかりだったので、あまり父を慕っていませんでした。結局、突然言い渡された大腸がんの発見が遅く、一旦手術をしたものの、余命宣告のあったちょうど6ヶ月の終わりに息を引き取りました。亡くなってからしばらくして、私は本当に父の事を愛していた事に気づき、気づけば、父が生前思いをはせていたアートの仕事に私自身が従事し、また、アパレル方面の仕事もさせていただき、父には息子がいなかったので、私が全て父のしたかったことを受け継いでいるのか、などと考えると、もっと生前協力し合えたのではないか、という思いがあり、このアーティストの父娘に自分の姿を重ねて想いが膨らんでしまったのかと思います。

ギャラリーの人やこの父娘は、私が突然泣き出すものだからびっくりしていましたが、一緒に泣いてくれました。それこそ、抱き合って。ちょっと恥ずかしいですが、みんな家族の愛だったり感動だったりは、あまり表に出せないのが、きっかけがあるとその想いって簡単に表面化するものなんだと、別の視点から改めて思いました。

台湾の市場は、今、日本のアートにあまりいい感情を持っていない事は事実のようです。それは、質とかそういう問題ではなく、過去3年間程に日本のアート関連事業が台湾市場に向けて行ってきた事への失望がもたらした結果なんだろうと思います。しかし、私は私独自で誠意を持ってやっていけば、時が経ち、きっと道は開けると信じています。現に、少なからずではありますが、今回の出張で道は開かれつつあると確信する部分があったからです。現地に足を運び、独自の感性でリサーチしないと分からない部分が色々あるんだな、という事を今回の旅で思い知らされたし、きちんと別にご褒美ももらって帰って来れたのは、今の私には充分過ぎるくらいの収穫でした。






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